君に甘やかされて溺れたい。


 藍良くんは自分のジャージを貸してくれた。


「ブカブカかもしれないけど、これ履いてよ」

「で、でも」

「泥だらけのままよりいいでしょ?」

「いいの?」

「うん。下だけジャージは目立つから上も羽織って」

「ありがとう」


 藍良くんは特別背が高いわけではないけど、ブカブカのジャージを着ると男の子なんだなぁと実感する。

 しかもなんかいい匂いがする。
 藍良くんに包まれてるみたいでドキドキが止まらない……!


「ごめんね、紅ちゃん。僕のせいだよね」


 藍良くんは叱られた子犬みたいにしょぼんとする。
 あまりにもかわいすぎてキュンキュンした。


「藍良くんのせいじゃないよ!」

「でも、紅ちゃんを傷つけたでしょ?」

「大丈夫。助けてくれてありがとう。すごく嬉しかった」

「紅ちゃん……」

「王子様みたいで、カッコよかったよ……」


 なんだか恥ずかしくなって尻すぼみになってしまう。

 かわいかったりカッコよかったり、ドキドキが止まらない。


「少しは紅ちゃんの王子様に近づけてるかな」


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