危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
片桐は以前にもましてすみれに事務的に接した。それはまるで意図的に壁を作っているようで、あの夜のことはなかったことにしたいのだと受け取った。そのことに、ひどく落胆している自分に気づく。
まだ世間的には達也とは婚約中の身だ。自分の軽薄さに驚き、戸惑う。
──片桐さんの気まぐれだったのかもしれない。もう忘れよう。
立場的にもきっと後悔しているのだろう。すみれが引きずっていると知れば、重荷になるに違いなかった。
「あの……」
「どうしました?」
「いえ。送ってくれてありがとう」
すみれをいつもどおり会社まで送ると、片桐は急ぎの仕事を頼まれたとすぐに父のいる事務所へと向かった。
取り付く島もない雰囲気に、心底がっかりしていた。彼にとっては、あんなことは大したことではなかったのだ。