危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 
 唇の中に熱い舌が入り込んでくると、弱い電流が流れたように甘く痺れてくる。その痺れは唇を重ねるたびに、頭の中にまで広がっていく。息もできないほどに片桐の舌が口腔内に入り込んでくる。

 ぼんやりとしたまま、すみれは片桐が自分の着衣を乱していくのを見ていた。
 ブラウスのボタンが全て外され、下着をずらすと白い胸の膨らみが晒される。胸の真ん中にうっすらと赤く引き連れたような傷痕がある。

「醜いでしょう」

胸の中心にある手術痕。誰にも見せたことがない秘密。弱点。

 父は手術の日も仕事で来なかった。一人ぼっちで病院に入り、目覚めた時も一人だった。遠縁の親族と住み込みの家政婦が申し訳程度に顔を出し、すみれを表面的には労わった。
 誰かにそばにいてほしかった。よりそって手を繋いでいてほしかった。心細いと泣いたり、弱音を吐いたりしたかった。
 その全てを飲み込んだ時の感情が胸の傷を見るたびに思い出される。耐えがたい寂しさを押し殺し、ひたすら恐怖に耐えた夜を。
 だから自分の体は好きじゃない。

「見ないでほしい」
「きれいだ」
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