危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
こたつで鍋を用意しているすみれを見て、蓮が笑う。
「すみれのイメージにこたつはなかった」
「どんなイメージ? 実は憧れてたの。実家は父と二人暮らしでなんだか広くて寂しくて」
「高級フレンチとかイタリアンとか、お洒落なカフェとか」
子供の頃から、忙しい父がいない時は家政婦の用意した食事を一人で食べる生活だった。寂しさから小鳥や猫を飼ったこともあるけれど、自分より先に死んでしまう小さな命の儚さに耐え切れず、今は飼う勇気がない。
なにかを愛することは、なによりも恐ろしいことでもある。
孤独が深いほど、失った時の絶望も大きくなる。
「ふふ。そういうのより私はこうして好きな人とあったかい部屋でくつろいでごはんを食べてみたかった」
そう言うと蓮が、一瞬言葉に詰まって眉根を寄せ、複雑な顔をする
「誰かと家でご飯を食べたことがあんまりなくって。アニメやドラマで家族仲良くしてるの見ると、楽しそうだなって」
「そうか」
「母は幼い時に亡くなったし、父はあの通り仕事にしか興味がないから。中学生の時、私が手術することになって、お見舞いくらい来てくれないかなって思ったけど、とうとう来なかった」
「寂しかった?」
「うん。私は寂しくって絵ばっかり描いてた。おとぎ話の空想の絵ばっかり」
蓮は困ったような、憐れむような顔をする。まるで自分のことみたいに痛そうな顔をする。こういう反応を見るたびに、蓮は優しい人なのだと思う。