危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

「あんな残酷な目に遭って、簡単に傷が癒えるはずがない。うちの父も母も、もちろん私も蓮の傷が癒えることだけを祈って、見守るしかできなかった」
「優しいご家族に巡り合えたんですね」

 やっと口にした言葉が自分でもひどくうすっぺらいものに思えた。でも他になんと言えばいいのだろう。

「長い年月を経て薄皮を剥ぐように少しずつ笑顔を見せるようになって、将来の目標もできて事件のことも忘れたように見えたの」

 蓮の苦しさを想像しようとして、できなかった。簡単に理解できるものではない。

「そんな時、うちに週刊誌の記者がやってきた。一昨年の冬だったかしら」

 忘れかけていた傷が、再び疼きだしたのだとしたら原因は一体なんなのだろう。
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