危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
美大を卒業したあとも、こっそりと絵本を描き続けた。この世にはないような美しく優しい世界を。誰よりもそれを必要としていたのはほかならぬ自分だったのかもしれない。
今も昔も絵を描くのは、壊れそうな心を逃がすためだった。
今はただ蓮と出会い、愛した記憶を琥珀のように閉じ込めたい。そうしたら長い人生で酸化も腐敗もせずに美しいまま残るだろう。自分が抱える飢えや渇きは、他の誰かではもう満たされないという確信めいたものがすみれに筆を走らせる。右手を動かし続けることでしか埋められない真空がそこにはある。聖域と言ってもよい。
『いつか、完成させたら、蓮に一番に見せるよ』