危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
十二年前に、この街に来た時も外は凍えるほどに寒く、暖かい部屋の中で時間を持てあまし、冬の間祖母の家にこもり水彩絵の具で心の赴くままに絵を描いていた。
自分好みの淡い色合い。重ねていくほどに、混沌とした心が静かな世界に深く沈んでいく。その不思議な感覚は、カウンセリングだとか、周囲の励ましだとか優しさよりも私を癒した。
「すみれは絵がうまいねぇ。こんだけうまけりゃ将来は立派な画家さんかな」
時折やってくる祖母の誉め言葉は、どこまでも本気だったが、絵を仕事にすることの難しさは中学生でも想像できた。
祖母は、私に学校へ行けと言ったり、将来のことを心配しすぎたりすることもなく、雪かき要員と話し相手ができたことを純粋に喜んでくれた。
そのほどよい無関心さは、周りの大人たちの責任感による焦燥よりも私を優しく包んだ。
周囲の同情が何より痛かったからだ。結局冬の間にこの町を去った。去らざるをえなかった。長い冬を耐えて迎える春はさぞかし美しいだろうと思いながら。