危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 病室の外ではまだ肌寒いのに、桜の木には蕾がつきはじめていた。
 
 桜も今年で最期になるかもしれないと思うと、この世界のなにもかもが愛しく思える。
 心残りは、やはり祖母だった。
 いきなりやってきて、同居して、勝手に死んでしまうなんてとんでもない孫だと思う。
 
 それでもこちらへ来てよかったと思う。
 蓮への想いを断ち切ることだけはできなかったけれど、自分の人生を見つめ直すことはできた。東京にいたら心穏やかには過ごせなかったと思う。
 濃い三年間だった。ぼんやりと流されるままに生きてきたそれまでの人生から、父から離れ自由に生きることができたと思う。
 本気で人を好きになり、苦しみ別れ、それでも出会えてよかった。

 蓮から逃げたことへの後悔と孤独は、夜毎襲ってきたけれど、だからといってああする以外なかったと思う。
 結局加害者の娘という立場に耐えられなかったのだ。もしも違う出逢い方なら、絶対に別れなんて選ばなかった。
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