危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 さみしい子供時代を過ごした分、家庭への憧れは強かった。だからこそ、出会ったばかりで達也の求婚を受け入れた。父親と母親が協力しながら子供を育てていくスタイルも、今の時代では普通だが、すみれはそういうふうに育てられてはいなかった。
 街で幸せそうな家族を見るたび、いつかは自分もという気持ちになった。

 暗い気持ちで病室へ戻ると達也が見舞いに来ていた。

「すみれ、遅くなって悪かった。食欲あるか」

 すみれの好きな洋菓子店の袋を渡された。正直食欲はないけれど、気遣いは嬉しい。

「ありがとう。あとで食べるね。心配かけてごめんなさい。学会で忙しかったんでしょう?」

 泊まりで岩手に行っていたようだが、一日早めに戻ってきたのだと言う。

「すみれのほうが大事だからいいんだよ」
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