危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

すみれは美大を卒業後、小さなデザイン事務所に就職したばかりだった。父は今最も注目されている政治家で、いずれ総理になるとあちこちから言われていたが、すみれ自身は自分の器に合ったささやかな人生を送るのだと漠然と思っていた。
結婚などまだ先だと思っていたけれど、両家の意向で早まることになったのだ。

 とんとん拍子に進んでいく話に、心が追いつけない時もある。特に今日みたいな夜は。

「おめでとうございます」
「すみれ、きれい」

会場中心に用意された二人の席へ向かう途中、皆が口々に祝いの言葉と、すみれへの賛辞を投げかける。

 父はきっとこの結婚で大きな利益を得るだろう。達也の家は単なる医者一家ではない。彼の祖父は財だけでなく、各方面に多大な影響力をも持っている。
 だがしかし、すみれはそれでも幸せだった。たまたま結ばれた相手が親の意向にも沿うような家柄の人間だっただけだ。
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