もっとドキドキさせて
放課後と過去
昨日悪夢を見たせいで、睡眠の質が悪かったのかもしれない。
学校に行っただけなのに、すっかり疲れてしまった。
夕食を済ませて、自分の部屋でぼーっと過ごしていると扉をノックする音が聞こえた。
「お嬢様、失礼します」
怜の声だ。
それほど乱れてもいない髪を慌てて整える。
「はーい!」
私が返事をすると同時に怜が部屋に入ってきた。
「急に申し訳ありません。少々、気になることがあったものですから…」
怜が緊張した面持ちで私を見た。
「気になったことって?」
「お嬢様…最近どうも様子がおかしかったように感じまして…。どこか上の空というか、塞ぎ込んでいるというか…」
心配そうな怜の顔が目に映った。
怜が私のことを気にかけてくれている…それだけで私は少し嬉しかった。
だから、怜にずっと抱えていたものを打ち明けることに決めた。
「最近、夢を見るの」
「夢…ですか?」
怜は不思議そうに問いかける。
「うん、夢。怜が…急に私に対して冷たくなったときの夢」
口にした瞬間、急に部屋の温度が冷たくなったようにかんじた。
怜の表情も、みるみる強ばっていく。
「私、あのときのこと、今でも思い出すと悲しくなるの。ずっと仲良く過ごしていたのに、急に怜が他人行儀になって。それまでは、ずっと…」
止まらない私の言葉に被せるように怜は声を発した。
「私はお嬢様のことが好きです」
予想外の言葉に、どう反応したら分からなかった。
「え?なんて…」
驚き過ぎて、こんな反応しかできない。
「ですから、私はお嬢様のことが好きです」
「それと、これとはどういう関係があるの?」
突然の怜からの告白に嬉しいはずなのに、戸惑いが隠せない。
「お嬢様に急に冷たくした日のことを覚えていますか?あのときの事情を今からお伝えします」