「みんなで幸せになると良いよ。」
「ごめん」その三文字が出ない。

「ありがとう」それも出ない。

椿が僕の目を見ながら泣きながら距離を減らして



「来て…くれたんやね…ありがとうね…。」



言いたかった言葉を、椿が先に言った。

「こっちの台詞やし。来てくれて有難う…」

鼻をすする音と、細く鳴く彼女が

胸元にいる。

手放していた間に冷たくなった手も、

徐々に温もりをもちだす、




そんな感覚。
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