「みんなで幸せになると良いよ。」
「何も言わんで聞いてな。」

前置きに彼女は『うん?』と不思議そうに言った。

唇に人差し指を立てて、「シー!」とすると

彼女は『ごめん』とジェスチャーで返した。



「キレイやと思うねん、椿。だから、汚いとかもう絶対思わんといて。」




言ってる最中

「あかん」と思った。

いつもより小さな声じゃないと、

もっと震える、って。

これ以上声を張ると、

泣いてしまう、って。




聞こえなかったのかもしれない。

表情も見えなければ、反応もない。

ただただ、前を見て歩いていた。



だけど、

聞き返しても来なかった。
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