「みんなで幸せになると良いよ。」
彼女は僕に気付いたのか、ただの偶然なのか目が合った。
吸い込まれそうという表現では追いつかないくらい澄んで奥行きのある黒目。見たことはないけど、喩えるならメデューサ。

大きい黒い鞄を揺らしながら歩いてくる。
目が合ったということより、睨まれている感じがして胸が高鳴りを覚える。

流し目で通り過ぎるとヒールの乾いた音は段々小さくなっていった。

『見惚れるほどきれいな顔やったね。私が同性愛に目覚めたら彼女にしよう。』
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