「みんなで幸せになると良いよ。」
『露店の花火大量に買った日のこと覚えとう?』

1本3000円の花火。思い出しただけで笑えた。

「勿論。6000円分買って火がついたの2個やで!忘れられないやろ。」

『そうそう。文句言いにみんなで来たらもう露店解体してトラックで名神乗ってるって。やられたよね。最終日の深い時間やったからね。おっちゃん逃げやがって。』

「6000円で店の花火全部って。おかしい思ってん。5万分円はあったやろ?」

『もっともっと。ゴミ袋パンパンやったやん。みんなで公園まで浴衣引きずってさ。』

「汗かくは、火ぃつかんわ、おっさん逃げるわ、まさに最悪やったよな。」

『結局点くのも線香花火2本でさ。コンビニ買えばいいのにみんな意地はってさ。』

「残りの1本3000円の線香花火でどれだけ盛り上がるか、って。」

『うん。…でも、ほんまあの日の1本の線香花火は生涯忘れんやろねぇ。』

「世界一高くてちゃちな線香花火なぁ。めっちゃきれいに見えたし。」

『ははっ。お腹空いてやっとの思いで食べた御飯みたいな。』

「付加価値だけで光りやがって!」

『…楽しかった。うん、楽しかった。』

「…うん。」

言葉にはしなかったけれど、急な坂道沿いに並ぶ出店の数が減っていること

みんな気付いていたけれど、





淋しくなるから誰も言わなかった。
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