「みんなで幸せになると良いよ。」
友達と「今度は輝かせようぜ!打ち上げや!」と盛り上がって露店で花火を買いあさる。

ねずみ花火はしょうもないとか、立体的に見える花火は邪道だとか、ロケット花火はペンチで笛の部分を切ってやるとか懐かしく思える会話で屋台を物色した。

「ロケットはいらんやん。あの回転して飛ぶやつやりたい!水の上でやろうや!!」

『線香花火リベンジするやろ?束?束でやっちゃう??』

「束でやったらもう線香ではないやん!ただの花火や。繊細さもあらへん。」

テンションは高いまま花火をカゴに入れてく。

ふと坂を見上げた。
本当になんとなく坂の上を見た。目を疑った。

まず目に飛び込んできたヒイラギの姿に思わず2度見してしまった。
ヒイラギが顔一杯に微笑んで女友達と下ってきた。
僕は目を背けて、花火を選ぶ友達に加勢した。
ヒイラギは僕に気付くはずもなく神社から出て行った。


終始笑顔。



気持ちが悪かった。きれいな女性の笑顔はきれい。
ヒイラギも例外ではなくきれいだったけど、
あの不器用であまり笑わない彼女の「長続きさせた笑顔」は心持が悪かった。


広い公園の一画で花火に日をつけても、さっきの胸騒ぎの続きがした。
友達との花火は大人になった今、凄くきれいに空に舞い上がった。

「そういえば二人きりできたのも最終日やったな。」

小さな大輪の花の下、僕は思い出してしまっていた。

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