小児科医が甘え下手な看護師に愛を教えました
わからない。わからない。わかりたくない。


さっきの騒ぎが嘘のように、静かになった病室。西日で海斗の寝顔が照らされる。

改めてみるとやつれて、隈もひどい。


「ひとのこと、いえないじゃん。…ばか」


きっと海斗の親が会いに来た。そして彼に言った。妹が死んだって。もしかして、余計な一言も言ったのかもしれない。想像もしたくない言葉を浴びせたのかもしれない。

(オマエノセイダ)


「なんで、なんで苦しんでる人がさらに苦しまなくちゃいけないんだろ」

ポロっと出たこの言葉も誰にも届かず、空気になる。

ただわかるのは、私の手にある海斗の手帳の言葉だけ。


「俺のせいで妹が死んだんだ。俺が警察沙汰になったから。治療費が払えなくなって妹は死んだんだ。俺のせいで」

殴り書きされたような、苦しんでるような、彼の本音。





ふぅ…。


「帰るか」

次に目覚めるときは私がいないほうがいい。

また、興奮状態にさせてしまうかもしれない。

そっと、病室から出た。翌日、私は勤務時間前に海斗の病室に顔を出した。


あれから深夜にまた目が覚めたと報告があったから。


コンコン

「失礼します」

三浦先生と松崎さんがいた。


海斗には酸素マスクがつけられていて、モニターで見ると熱が高かった。

「あお、い」

私は近寄って、顔をしっかり見た。

「海斗、手帳見た」

海斗はぐっと顔がこわばった。

「海斗、ちゃんと聞いて。海斗は絶対悪くない、絶対、絶対悪くない」

「でも!っ…ゴホッゴホッ」

前かがみになった海斗の体をさする。

「自分を責めないことは無理かもしれないけど、自分自身のことも大切にしてほしい、ね?」


コクンと頷くのをみて少し安心した。





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