あの駅で君を待つ。
1話
「起立ー、礼ー」


ホームルームが終わるお決まりの挨拶。


いちいちめんどくさい。


別に礼を言うようなこと、担任はやってないだろ。


そう思うけど、口には出さない。
みんなやっているから。


だから学校はめんどくさい。


周りを気にしないと、浮くから。


でも、もう帰れる。


帰り道、校門を出て左、海の方向に行くのは俺だけだから、1人になれる。


早く帰ろう。


そう思って立ち上がろうとした時、


後ろからためらいもなくどつかれた。


「よっす律、もう帰んの?」


「あー…コウ」


肩を組まれて間近にあるそいつの顔を見ると、
つくづく嫌になる。


望月 光。こいつは俺の幼なじみだ。


顔も整っているし、運動神経も成績もいい。


面白いことも沢山言うし、ノリもいい。


そして、サッカー部の副キャプテン。


そりゃ当然のように男女ともにモテる。



それに比べて、俺は何も飛び抜けたところがない。


成績も顔も運動神経も、何もかも普通だし、
バスケ部に入ったはいいものの、レギュラー入りも出来なかった。


何も面白いことは言えないし、


俺みたいなのが光と仲良くできるのは


幼なじみだからであって、


普通に高校で出会ってたら、


俺と光は仲良くならなかったんだろうなと思う。


「お前ほんといつも帰り早いよなー。しかも1人だけ海だけ駅の方向!!たまにはバスで帰んのもいいんじゃないの?」


「あー…俺、バス酔いしやすい、から…」



嘘だ。乗り物酔いなんてしたことない。


でも1人になりたいからなんて言ったら


光は俺に気を使うだろうし、


下手したら学校内で1人になる。


それは変な目で見られるから嫌だった。
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