その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~

~エピローグ~

~エピローグ~

 雲がさぁっと流れる風に寄り添い、動いていく。

 黒い髪を靡かせた少女は、誰かに呼ばれたような気がして、後ろを振り返った。

「どうかしたか、レネ」
「いえ……」

 傍らにいるリューグの声に、紙安改め、レネ・チェリファーは顔を戻した。
 そして、目の前の、黒曜石があしらわれた立派なお墓には、ある少女の名が刻まれている。

 ステイシア・アロウマーク。
 父と、母の名の下に刻まれたその名前を知る人はあまりいない。
 こうして紙安がレネと名乗り出した以上、多くの者はきっと、幼くして亡くなったというアロウマーク家の娘のことだと思うだろう。

 しかし、二人にとっては違う。つい数年前まで彼女は確かに存在していた。
 そして、リューグと紙安のことを結び付けてくれた。
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