その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
「あいつは、ステイシアは俺にべったりだった。随分と偉そうな喋り方をしていただろう? あれは、俺を真似したかったようなんだ……人付き合いが苦手で、不器用で、でもそんなところが俺には可愛くて。ずっとこの手で守ってやりたかった」
「なんとなく……わかりますよ」

 リューグが弔いの花――彼女が好きだったという黒いビオラの束を置き、紙安は苦笑した。

 きっと彼女はずっとリューグから見ていてもらうことを願っていた。
 けれど……最後には彼の幸せを願って消えてしまった。

 二人は並んで祈りを捧げると、顔を上げる。

「あれ以来……俺を突き動かしていた恨みの気持ちがさっぱりと消えてしまった。なあレネ、ステイシアとお前は一体俺に何をしてくれたんだ?」
「それは……秘密です」

 彼を助けるためにステイシアが命を擦り減らしたこと。
 隠された事実を知って思い悩んだことなど。
 それをリューグに明かすことを、きっとステイシアは望まない。

 だから紙安は、あまり詳しいことを彼には話していない。
 それでもリューグは、ステイシアがどれだけ彼のことを想っていたかを伝えた紙安の話を信用してくれた。
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