その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 暗黒石は一度起動すれば、あらゆる生命の力を吸い取り巨大に膨張する。
 そして、その容量が耐えきれなくなれば弾け飛び、周囲を巻き込んであらゆるものを崩壊、消滅させてゆく。

 おそらくフェルメイア王国の王都を中心として、国内の非常に広い範囲に大規模なクレーターが発生しているはずだ。

「やっぱり……私がこの世界に来たせいで、物語が変わってしまった」

 その場に崩れ、両目からぼろぼろと涙をこぼす紙安。
 だがその後悔は、長くは続かず……部屋の外から、騒々しい物音が聞こえてくる。

『ステイシア様ーッ! 急げ誰かッ、あの方をお逃がしし――ぐぁっ!』

 外から聞こえた悲鳴に、紙安は混乱する。
 扉を開け、世話をしてくれていた侍女が鬼気迫る形相で走り込んできた。

「ステイシア様、何者かがこの場所を見つけ、あなた様の命を奪おうと……! 脱出します、お手を早く!」

 侍女が彼女の腕をひっつかみ、廊下を駆け出す。
 気付けば屋敷中が、騒々しい気配と血の異臭で満ちている。

 侍女は迷いなく厩に通じる裏口へ走ると、そこを開け放ち外へ脱出しようとした。しかし……。
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