その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 これは絆を結んだ攻略対象者限定で、いかなる呪いや能力低下の術をも解除し、体力を全回復するというものだ。

 無論、リューグは攻略対象者ではない。
 でも、世にいる多くの女性をオトし専用の物語を用意させる程の男だ……。
 上手く状況をセッティングしてやりさえすれば、ロゼの心を掴み、絆を結ぶことも十分可能なのではと、紙安はそう考えた。

「――なんだ。話しかけても返ってこないと思ったら、考え事か? 悩みがあるなら俺に話せよ。お前のためなら、どんなことだってやってやる……だから遠慮なく言うといい」

 気付くと、リューグが足を組んで傍らに座り、こちらを見つめている。
 その胸元には、これまで見えていなかった呪いがはっきりと捉えられた。

 紙安の口からポツリと想いが零れる。

「お兄様は……どうしたら幸せになれますか?」
「…………お前が元気でいることが、俺の一番の幸せだ。それだけは、いつまでも変わらない」 
(この人を、助けたいな……)

 この世界に来て色々なことを知り、驚きもした。
 恐ろしい事態に何度も出くわした。
 けれど結局こうして放り出さずにいるのは彼と、あのステイシアが笑顔で幸せを掴むところを見たかったからだと、紙安は思う。
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