その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 続いて家族、そして多くの使用人たちが突如襲ってきた王国軍の兵士たちに惨殺される光景がちらつき、屋敷から焼け出されたリューグは幼いステイシアを抱えて逃げ、煤混じりの嗚咽を漏らした。


 以後も耐えがたい日々は続く。
 裏切者の子孫と石を投げ、掌を返したような周りの人々から妹を守るリューグ。
 両親と周りの人々の温かい記憶は、悲痛な死と暴力に塗りつぶされた。
 彼が感じた苦痛が紙安にも流れ込んでくる。

(リューグは……ずっとこんなものと)

 紙安は、心が押し潰されるような感触を味わっていた。
 このまま自分は消えてしまう、そう思った時……。
 ふいに、誰かが自分の魂だけをその場から引っ張り上げてくれたような気がした。

(……世話のかかるやつね。後は……あんただけでやるのよ)

 ――そんな声がして。

 気付けば紙安はベッドの上に寝ていた。
 四度目のステイシアとの邂逅は、もたらされなかった。

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