俺様御曹司からは逃げられません!
「どうして私のために、そこまでしてくれようとするんですか?」
「……分かるだろ、言わなくても」

 フイっと視線を逸らした絢人は頸を掻きむしった。綺麗に切り揃えられた黒髪から覗く耳の先がほんのり赤く色づいている。
 
 少し不貞腐れたようなその表情からも彼の想いは伝わってきて、楓の胸があたたかなもので満たされる。
 しかし、それでもはっきりとした言葉が欲しくて、楓はゆるゆると首を振った。

「でも絢人さんの言葉で、ちゃんと教えてほしい」

 ジッと絢人の横顔を見据えた。
 思えば、彼に何かをお願いするのは初めてのことかもしれない。
 
 緊張と期待が入り混じる胸を押さえながら待っていると、絢人の腕が楓の腰に周り、緩やかに抱きしめられる。
 ふわりと彼の匂いが楓の鼻腔を掠めた。

「――愛してる、楓。ずっと俺はおまえに惚れてるよ」

 甘く蕩けた声でそう囁いた。
 楓は息をのんで、迫り上がってくる熱いものを堰き止めるのに必死だった。
 絢人の指が楓の頬を撫で、次に楓の首に下がるネックレスにそっと触れた。

 彼から贈られたひまわりのネックレスは、忘れなければと思っていてもどうしても外せなかったものだ。
 楓の未練の塊を指に絡めながら、絢人は顔を綻ばせた。
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