茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
★R18
陽翔の腕に閉じ込められたかと思えば、温かく湿った感触が唇から伝わって来る。何をされているかは分かったつもりでも、陽翔が何故こんなことをしているのかの理解は全く追いつかない。正確には分かりかけているものの、そんなはずは無いと頭が完全に理解することを拒んでいた。その間にも陽翔はするりと分厚く熱い舌を口内に滑り込ませ、歯列をなぞり、頬の内側や上顎を丹念に撫でて行く。

「し、東雲、くん。な、なんで……?」

唇が離れた僅かな隙をついて、百子は呆然と告げる。陽翔の言葉を待っていた筈なのに、彼の様子が何だか変だし、無理矢理ではないにしてもキスされて、さらに今日愛撫された時と同様嫌な気持ちがしなかったこともあり、気が動転しているという言葉では足りないほど狼狽していた。

「悪い……また理性が……でもやっぱり我慢できねえ……好きな女が目の前にいると思うと……」

陽翔は罰の悪そうな表情を一瞬だけ浮かべたものの、うわごとのようにそう呟き、百子をそのまま抱き締める。その吐息は荒く、百子の耳朶をくすぐり、するりと鼓膜に侵入する。思わずその刺激で思わず小さく声が漏れた。

(え……? 好きな……女? 嘘、私……が?)

そして何か言おうとした唇は、再び陽翔によって塞がれる。陽翔がひたむきに舌を絡め、時々軽く吸うので、百子は段々と頭がくらくらしてきた。これほど情熱的なキスは経験したことがなく、彼女の全身から力が抜けていく。まるで食べられているような心地がしたものの、体の中心に小さな炎が灯って、その熱が体全体に広がった。

(また、流されちゃう……でも、気持ち良い……)

「キスだけで感じたのか? かわいいな」

百子の目が蕩けたのを見て、陽翔は眼鏡を外してニヤリと笑う。彼の双眸はすでに情欲の熱を帯びて、真っ直ぐに百子を捉えている。百子はその熱に焦がされそうだった。それと相反して、自分に触れる手つきは優しい。

「ここも好きだよな」

陽翔は片手で百子の耳を塞ぎ、塞いでいない方の耳朶をちろちろと、わざとリップ音を小さく立ててゆっくりと舐める。

「んっ……ああっ!」

耳を塞がれているためか、彼のリップ音の方に神経が行き、ゾクゾクとした感覚が体中を駆けめぐっている。それが終われば、今度は舐められた耳も、唇も塞がれる。百子の小さな熱い舌は陽翔の分厚い舌に絡め取られるたびに、キスの音が口腔に、耳により鋭く飛び込んできて、百子も知らず知らずのうちに、彼の舌に自分の舌を絡めていった。
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