【短】made by……



 男なのに「美人」という形容詞の似合う彼こそが、明治時代から続く資産家・天ヶ瀬家の跡取り息子、天ヶ瀬充希。年齢はリミより三つ下の17歳だ。

 そして今、彼の周りには何人もの女の子たちが群がっている。皆、充希と同じ学校の制服を着ており、可愛らしい容姿をした子ばかりだ。

 まさに両手に花。いや、人数的には両手に加え両足にを持たせてもさらに余る。

 そう。資産家の息子で眉目秀麗とくれば、充希は当然よくモテるのだ。そして充希自身は、こうしてしょっちゅう女性──それも不特定多数の綺麗な女性を自室に連れ込む遊び人。

 リミが見たのは、充希がそんな中の一人の肩を慣れた手つきで抱き寄せ、さらに別の子の髪をさらりと撫でたところだった。



「……」



 一瞬迷う。このまま見なかったことにして静かに退室するか、それとも気にしないふりしてテーブルに紅茶を置きにいくか。

 しかし迷っているその間に、充希は扉の前に立つリミに気付いてしまった。



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