「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜

 * * *

 萌々香は店を閉めたら着替えて母と閉店作業をした。

 父はハロウィン商戦の反省会という名の商店街の飲み会に出かけている。

「まったく和菓子だけ作ってあとはこっちに全部やらせて」
 ぶつぶつと母が文句を言っている。

 いつもなら萌々香も一緒になって文句を言うところだが、今日はそんな気分にはなれなかった。
 レジのしめ作業を母がして、萌々香がハロウィンの飾りを片付ける。
 かぼちゃのニタニタ笑いがしゃくに触った。

 ジャック・オ・ランタン。

 日頃の行いが悪いジャックが悪魔を騙した結果、ジャックは天国にも地獄にも行けずに彷徨うことになった。だからランタンを持ってどこにも行けずにずっと彷徨っているという。

 自分は悪いことなんてしてないはずなんだけど。
 飾りを袋に入れながら、萌々香は思う。

 心は沈んで彷徨っている。たった一日でこんな気持ちになるなんて、昨夜は予想もしなかった。

「知ってる? もともとはかぼちゃじゃなくてカブだったんだって」
 萌々香が貴子に言うと、
「なにが?」
 と貴子は問い返した。

「このかぼちゃのランタン。アメリカにキリスト教が伝わったとき、アメリカだとカブになじみがなくてかぼちゃがよくとれるからかぼちゃになったんだって」
「へえ、そうなの」
 興味なさそうに貴子は答えた。

「レジはもうしめたから」
「わかった、こっちもゴミをまとめたら戻るね」
 母は袋に入れたハロウィンの飾りを萌々香から受け取り、先に二階の自宅に戻って行った。飾りは来年まで押入れの中にしまっておくことになる。

 萌々香はまとめたゴミを店の裏に持って行こうと外に出た。

 夜のアーケード街は閑散として寂しい。シャッターもしまっているので、なおさら寂れて見える。
 商店街に残されたハロウィンの飾りも明日にはぜんぶ撤去されてしまう。

 これも捨てるべきか。
 ポケットから青銀のうろこを出して、萌々香は悩む。
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