「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜
 大きなうろこだった。おはじきくらいの大きさがあり、薄いのに硬い。

「来るって言っておいて、やっぱり来ないじゃない」
 母からの伝言に、いつの間にかすがっていた自分に気が付いた。

 尊琉のきついまなざしと、笑ったときのゆるやかな空気が思い出され、萌々香の胸を締め付ける。

 今日はまだあと数時間ある。
 本当にからかっただけなら名刺を置いて行かないのではないのか。
 そんなことを思ってしまう自分に、苦笑した。

 もういない人の行動を考えたところで意味がない。
 襲われたところを、彼は助けてくれた。
 もうそれだけでいいのではないのか。

 風が吹き、ガーランドフラッグがゆらめいた。

 のろのろと黒いワンボックスが走って来た。
 どこかの業者だろうか。
 昨夜のこともあり、萌々香は警戒しながらゴミを持って歩き出す。

 黒い車が急発進した。
 かと思うと萌々香の前で急停車する。

 思わず立ちすくんだ。
 助手席と後部座席から男が現れる。

 一人は骸骨のお面をかぶっていた。もう一人はミイラの被り物だ。

 昨日の!
 萌々香はとっさに踵を返す。

 が、男たちのほうが早かった。
 萌々香の口をふさぎ、車に乗せて走り去る。

「萌々香?」
 異変を察した母が外を覗きにきたときにはもう、萌々香の姿はなかった。

 ただゴミ袋だけがぽつねんと残されていた。
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