「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜
* * *
車は10分ほど走り続け、人気のない河原に降りた。
背の高いススキが一面に生い茂り、黒い車の周囲を覆いつくしている。
「ここなら邪魔もないな」
萌々香の口をおさえた男が言い、手を離した。出口側に男二人がいるので、逃げることができない。
満月の青白い光が嘘くさいほどに明るく、骸骨の薄笑いをはっきりと浮かび上がらせた。
「昨日のあいつはなんだ」
骸骨が問う。
萌々香はただ首をふる。
名刺も名前も、今となっては本物なのか疑わしく思える。
どうであれ、ここで彼らに言うのは得策には思えなかった。
「なめてんのか!」
男が怒鳴る。萌々香は泣きそうになりながら身を固くする。
手の中の鱗をぎゅっとにぎりしめる。
昨日は尊琉が助けてくれた。
だが、今日は誰も助けてくれないだろう。
そんな都合よく現れるはずがない。
「何も知らない、帰して」
窓を開けて逃げられないかと横目で見る。が、ダメだ、開くまで彼らは待ってくれないだろう。
「やられっぱなしで黙ってられるか!」
ミイラ男が叫んだ。
「まあ、落ち着けよ」
リーダー格の金髪の骸骨が言った。
「代わりにお前に相手してもらおうか」
声には愉悦と嘲笑が含まれていた。
ぞっとした。
窓を開けようとしたが、その手はすぐに掴まれて萌々香は引き倒された。手からうろこが落ちる。
「やめて!」
「おとなしくしろ!」
ミイラ男が萌々香にナイフをつきつけた。
馬のお面の男が運転席から身を乗り出した。
萌々香は恐怖で顔をひきつらせた。
そのとき。