「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜
「俺の神たる姿を見たものは殺すか、嫁にするか、どちらかだ」
「そんな……」
 おじけづいて身を引く萌々香を、尊琉はぐっと抱き寄せる。

 彼の目が鋭く光る。
「だが、殺す必要はない。君は俺と結婚する。そうだろう?」
 どきん、と心臓が大きく脈うった。

 どうかしてる、と萌々香は自分を思う。
 まるで脅迫なのに、彼にときめくなんて。

「また私をからかって……」
「からかってなどいない」
「だけど夕方、急にいなくなって。連絡先だって知らないのに」
「あれは……ちょっと急用で。すまなかった」
 恵武が興奮して耳と尻尾をだしてしまったので、急遽姿を消したのだ。

「何も言わずにいなくなって」
 声に涙が混じり始めた。
「絶対、からかわれたんだと思った」

「悪かった」
 尊琉が萌々香を抱きしめる。
 涙が彼女の頬を伝う。
 尊琉の手が優しくその雫を拭いとる。

「あなたのことなにも知らないのに、結婚だって言われて、ふりまわされて」
 萌々香は尊琉を見た。

「もっと待ってほしい。お互いを知るために、時間が必要だと思う」
「待つ必要はないな」
 彼は断言した。

「今日一日すごして君を知った。それで充分だ」
 尊琉は微笑して萌々香を見つめた。
 萌々香は頬を赤らめて尊琉を見つめ返す。

 銀色の輪がかかった月は真円で、なにもかもを満たすかのように明るく地上を照らしている。

 月光を受けて青銀に光る彼の目に浮かぶのは、彼女に愛される自信と、彼女への愛。

 胸がきゅうっとしめつけられる。
「大切にするから」
 尊琉の言葉が心に響き、溢れた。

 萌々香はうなずいた。
 彼は彼女の頬に手を伸ばした。
 彼女は逆らわず彼の手に動かされるまま、顔を上げる。

 端正な顔がすぐ近くにあった。
 目を閉じると、優しい感触が萌々香の唇に重なった。

 一面のススキに風がそよぐ。
 銀の輪をかけた満月が、二人を明るく照らし続けていた。





 〜 終 〜
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