だから聖女はいなくなった

4.

 中庭にある長椅子に、二人並んで腰をおろす。二人の間は、子どもが一人座れるくらいの微妙な距離が空いていた。

「サディアス様は、どうしてこちらに?」

 彼女は愛おしそうに腹部を撫でてから、足元の花を摘む。

「はい。貴女に会いにきました。兄からの言葉を伝えるために。それからこれを……」

 カメロンには受け取ってもらえなかった子どもたちからの手紙を、サディアスは差し出した。

「まぁ。あの子たちから? ありがとうございます、サディアス様。これを、あの人……カメロンに見せました?」
「はい。そうしたら、自分で渡せと言われました」
「ふふ。あの人らしい」

 たったそれだけなのに、彼女がカメロンをどのように想っているのかがひしひしと伝わってきた。

「あの……ラティア……ラッティとカメロン殿は、その……」
「えぇ。私がこちらに戻ってきてしばらくしてから、結婚しました」
「そうですか……」

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