だから聖女はいなくなった
「それでも、なんとか思いとどまることができたのは、あの人との約束があったから……。キンバリー様の婚約者を演じ終えたら、必ずここへ戻ってこようと、そう思っていたのです」
キンバリーとの婚約さえ、利用しようとしていたのだろうか。だが、婚約の先の結婚はどう考えていたのだろう。
「婚約とは結婚の約束ですから、いかようにもなるのですよ。現に、キンバリー様と私の婚約は解消されたではありませんか」
まるでサディアスの心の中を読んだような言葉である。
彼女は膝の上の手紙に視線を落とした。
「孤児院の子どもたちは、お元気ですか? 将来、あの子たちが自立てきるようにと、いろいろと教えてはいたのですが。役に立っているでしょうか」
「はい。子どもたちも、ラティアーナ様に感謝しています。商会でお針子として働いている子もいます。菓子店に務めている子もいます」
「そうですか……安心しました」
「……ラティアーナ様は、兄が孤児院へ寄付をしていたことをご存知ですか?」
「ええ。ですが。あの方の寄付金は、孤児院とは別のところに流れていたのですよ」
キンバリーとの婚約さえ、利用しようとしていたのだろうか。だが、婚約の先の結婚はどう考えていたのだろう。
「婚約とは結婚の約束ですから、いかようにもなるのですよ。現に、キンバリー様と私の婚約は解消されたではありませんか」
まるでサディアスの心の中を読んだような言葉である。
彼女は膝の上の手紙に視線を落とした。
「孤児院の子どもたちは、お元気ですか? 将来、あの子たちが自立てきるようにと、いろいろと教えてはいたのですが。役に立っているでしょうか」
「はい。子どもたちも、ラティアーナ様に感謝しています。商会でお針子として働いている子もいます。菓子店に務めている子もいます」
「そうですか……安心しました」
「……ラティアーナ様は、兄が孤児院へ寄付をしていたことをご存知ですか?」
「ええ。ですが。あの方の寄付金は、孤児院とは別のところに流れていたのですよ」