だから聖女はいなくなった
その言葉に、胸がズキンと痛む。それは、つい数か月前に発覚した事実。孤児院へと送っていた寄付金は、実際には孤児院に届けられていなかった。
そしてその事実を、彼女は知っていたのだ。
「キンバリー様の寄付金は、神殿に流れていたのです」
いつの間にか彼女の手は動いていた。一つの花冠が出来上がる。
「キンバリー様はさらに神殿に寄付金を与える。神殿としては、思いもよらなかったでしょうね。ですから、聖女ラティアーナのドレスを新調したわけです。キンバリー様の婚約者としてふさわしいようにって。みすぼらしい巫女姿のままでは、彼に飽きられてしまうだろうと心配したみたいです」
少しだけ、彼女の手の動きが鈍くなる。
「ですが、それがキンバリー様には面白くなかったのでしょう? 彼にとって聖女ラティアーナは、みすぼらしい巫女姿であってほしかったようです。あのような豪奢なドレスを身に着ける聖女は聖女ではないと、そう思ったのでしょう?」
「違います。兄は……神殿への寄付金をラティアーナ様が私的に使用されていると、そう誤解したのです」
「少し考えればわかること。質素であり倹約であり堅実であるがモットーの神殿ですが、聖女や巫女以外の神官たちの様子をご覧になりましたか? 私たちに質素倹約、堅実だと言っておきながら、彼らの生活はそれとは程遠いものだったのではないでしょうか? キンバリー様が聖女に飽きないようにと、神官たちのほうから聖女のドレスを作らせたのです。神殿側は、聖女を使ってキンバリー様を縛り付けておきたかったのです。だって、寄付金をくださる絶好の鴨なのですから。それに、聖女との婚約を言い出したのも神殿側からですよね」
そしてその事実を、彼女は知っていたのだ。
「キンバリー様の寄付金は、神殿に流れていたのです」
いつの間にか彼女の手は動いていた。一つの花冠が出来上がる。
「キンバリー様はさらに神殿に寄付金を与える。神殿としては、思いもよらなかったでしょうね。ですから、聖女ラティアーナのドレスを新調したわけです。キンバリー様の婚約者としてふさわしいようにって。みすぼらしい巫女姿のままでは、彼に飽きられてしまうだろうと心配したみたいです」
少しだけ、彼女の手の動きが鈍くなる。
「ですが、それがキンバリー様には面白くなかったのでしょう? 彼にとって聖女ラティアーナは、みすぼらしい巫女姿であってほしかったようです。あのような豪奢なドレスを身に着ける聖女は聖女ではないと、そう思ったのでしょう?」
「違います。兄は……神殿への寄付金をラティアーナ様が私的に使用されていると、そう誤解したのです」
「少し考えればわかること。質素であり倹約であり堅実であるがモットーの神殿ですが、聖女や巫女以外の神官たちの様子をご覧になりましたか? 私たちに質素倹約、堅実だと言っておきながら、彼らの生活はそれとは程遠いものだったのではないでしょうか? キンバリー様が聖女に飽きないようにと、神官たちのほうから聖女のドレスを作らせたのです。神殿側は、聖女を使ってキンバリー様を縛り付けておきたかったのです。だって、寄付金をくださる絶好の鴨なのですから。それに、聖女との婚約を言い出したのも神殿側からですよね」