だから聖女はいなくなった
「食事はきちんととっているのか。夜はきちんと休めているのか。神殿ではどのような扱いを受けているのか。それを彼女に聞いたのだ」

 わりとまともなことを口にしている彼に、サディアスは驚愕する。だが、それを表情には出さない。

「お前は知っていたか? 神殿でラティアーナがどのように扱われていたか」

 彼女と共にした時間が少ないサディアスが、そういった踏み込んだ内容を知るはずもない。

 いいえ、と小さく首を横に振る。

「私は、ラティアーナに聞いたのだ。神殿ではどのような物を食べているのかと。彼女はここで出したお茶菓子をけして口にはしなかった」

 そう言ったキンバリーの視線は、目の前の焼き菓子を捕らえている。きっと、同じようなものをラティアーナにも出したのだろう。
< 19 / 170 >

この作品をシェア

pagetop