だから聖女はいなくなった
「これ、よんで」

 よたよたと男の子が寄ってきて、違う絵本を差し出した。サディアスは手にした絵本を棚に戻すと、男の子が渡してきた絵本を開く。
 やはり、今までと何かが違う。その違う何かがわからないまま、サディアスは子どもたちの前で絵本を読みだした。

 そうすると、様子を見ていた他の子どもたちも、ゆっくりとサディアスのほうに近づいてくる。
 少しずつ子供たちの顔にも明るさが戻ってくる。

「……おしまい」

 サディアスの最後の言葉で、ぱちぱちとまばらに拍手が起こった。

「サディアスさま」

 別の男の子がおずおずと絵本をわたしてきた。

「このご本、直せますか?」

 違和感の謎が解けた。ここにある絵本は使い古されているのだ。たくさん読めば読むほど、本も年季が入るのはわかる。それでも、新しい本は定期的に入ってくるはずで、彼らはよくそういった新しい本を読んでほしいと手にしていた。
 その新しい本が見当たらない。

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