星が代わりに泣いてくれるから
持っていたジュースの紙コップに力が入って皺が入る。
「イシイはそういう時どうしてるんだ?」
「そういう時というのは」
「まあ相手に不満があった時、とか」
イシイはそうですねぇ、と二本目を開ける。イシイの顔色は変わらない。
「相手に言います。相手は無意識だからそういうことをするんでしょう。でもそれをちゃかしたり流したりしたら自分の中で限度の数をきめてさっぱり別れます」
「別れる、まで?」
声は震えてはしなかったか。イシイはその大きい瞳でこちらの目線にしっかり合わせる。
まるで断罪されるかのようなイシイの視線は居心地が悪い。
「勿論です。直そうとするならまだしも、そんなことするやつこっちが本気で悩んでいてもなんの頼りにもならないじゃないですか。そんな人なら私にはもっといい人がいるって切り替えられるので」
「でも恋人への情とかあったら」
イシイはなおも言い募ろうとする俺に皮肉気に笑った。
見たことのない嘲ったような表情だった。
「その情をその行為で消されているんですよ。別れるって決めた女の行動は冷たくて、速いですよ」