星が代わりに泣いてくれるから


「だってね、例えばですけどデートしてていちゃいちゃしてコミュニケーションとってからのセックスってとっても気持ちいじゃないですか。でもこれが会っていきなりセックスだけ、とかまじでないですよ。舐めてんのか、と。会話も前戯、セックス前の事象は全部前戯なんですよ。それを無視してセックスだけとかだったらおもちゃで一人で遊んどけってなりますよ」


カワイがそうでないことを祈りますけど、と笑っていたが俺は頭を鈍器で殴られたように衝撃を受けていた。


妻のセリカとの会話がなくなったのはいつ頃からだろうか。徐々に減っていった気がする。

セリカの話す取り留めのないことを耳が受け止めなくなって、頓珍漢な返しをしては呆れられた。「疲れてるならはやく寝てきたら?」はよく聞くようになった。今思えばセリカの最近何をしてるのか、などは全くわからないと改めて思った。

笑った顔も最近見ていないなとも。
寝顔か、無表情にぼんやりしている顔だった。


そう思った瞬間急激に汗が身体に滲んだ気がした。


夫婦としてもう関係が崩れかけているんじゃないかと、そんな思いが背中にぴったりとくっついてきたからだ。
< 9 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop