星が代わりに泣いてくれるから
「だって、私たちがあんたの最後まで面倒みてあげたいけど先に死ぬのは私たちでしょう。その時一人だったらって考えると心配で心配で仕方なかったのよ。あんたぼんやりしているし、しっかり者のレン君だったから安心したの。それに…」
「それに?」
「レン君はよく連絡くれていたのよ。この日は何時までに返しますのでとか。いい人よ本当に―――逃したらだめよ」

レンと付き合っている時、ずっと実家にいた。セリカの家は女の子に対して働いているにも関わらず門限があった。休みの日の門限である。

元々お嬢さん育ちというか、娘に対しての過保護感は否めなかった。それに辟易した人もいたが、レンは違った。

「大事にしてもらってるんだな」と言って、肯定してくれた。茶化すひとはいても、レンのように受け止めてくれる人というのは初めてだった。

レンは絹のタオルで包み込むように大事にしてくれていた。それでも家族として時間を過ごすと、どうしてかお互いが大事なはずだったのに噛み合わなくなってしまった。表面上は穏やかな夫婦として。

だけれど少しのほつれを見ないふりしていたらどんどんボロボロになってこんなことになってしまった。星が一つ、小さな線を描いて流れたような気がする。それを見て思いがこみ上げてしまって涙が目尻から零れ落ちる。

ざ、と頭の上の方から人が近寄ってくる芝を踏みしめるような音が聞こえた。
< 22 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop