致し方ないので、上司お持ち帰りしました
13







 その日、真白さんに抱かれた夜、夢を見た。
 どこか懐かしくて、あたたかい夢だ。


「涼香……」


 私の名前を呼ぶ懐かしい声がした。
 何度も何度も、聞いた声。
 何度も何度も、もう一度聞きたいと願った声だ。




「おばあちゃん!」

「涼香、」

「おばあちゃん。私ね、たくさん話したい事ある! わからないの。おばあちゃんの予言通りに生きているのか、わからないの」

「涼香、ご縁が見つかってよかったね」

「ご縁って、真白さんのこと? 真白さんは童貞卒業したけど大丈夫だよね? 私、彼が大好きなんだ」

「おばあちゃんは、涼香と結ばれたご縁を引き合わせただけ。あとは涼香たち次第……」

「それって……」

「涼香、幸せになりなさい」

「おばあちゃん! おばあちゃん!」




 私の呼びかけに反応せず、おばあちゃんの姿が遠のいていく。


 もっと、話したいのに――。




 目が覚めた時、心に残っていたのは、あたたかな感情だった。そして、夢の中でおばあちゃんはとびきり優しい笑顔で笑っていた。


 祖母が導いてくれた不思議なご縁。
 隣には愛しい人が寝息を立てて眠っている。

 

 幸せは自分にしか感じられない。
 今心にあるこの感情は、胸を張って伝えられる。


「おばあちゃん、私。幸せになれたよ」

 この声は、天国の祖母に届くだろうか。

 彼が起きたらこの話をしよう。
 そして、真白さんにも伝えよう。

 今、幸せです。と。



 【完】
 
 

 
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