完全無欠な財閥御曹司の秘密は、私だけに××!
2章:問題の多い高峰医院

 ちなみに私には完璧上司とは似ても似つかぬ兄がいる。

 私の兄・高峰英雄(ひでお)は、大きな大学病院……のある街の一番端にある小さな医院――高峰医院を継いで医師をしている。

 祖父も父も医師だった。私も兄もいわゆる病院の子ども。
 と言えば聞こえはいいが、実際の医院は戦後すぐに建て直されたままで改装もされず、すでにボロボロ。機材は寿命が切れるか切れないかのところを何とか保っている状態だった。

 そこまではいい。仕方ない。
 医療機器は高いし、病院の修繕費なんて余裕がないと出せないから。

 一番の問題は兄が“人が良すぎること”。

 診察代が払えない患者さんを診る。薬を渡す。そしてツケだけがたまっていく。
 そんな患者さんがどんどん増えている。ここ最近は特に。

 権力関係に忖度しない兄は、近隣の病院の先生方、ひいては医師会の重鎮に反感を持たれてるらしい。
 それだけならまだしも、医療費が払えない患者や迷惑な患者は『高峰医院がいいですよ』と案内されてるそうだ。

 兄はそれすら怒らずに、『他で診られないなら仕方ない』とうちで引き受けてしまってる。
 きちんと保険がない人まで……。

 それもあって、私はHOUZUKIなんて給料のいい大企業に寝る間も惜しんで勉強して入った。

 私も医療関係にいきたいという思いもあったけど、兄が医学部に入っていたし、うちが貧乏なのは今に始まったことじゃないので、確実に安定して稼げる道を選んだ。

 HOUZUKIはボーナスも成績が反映され、残業代もしっかり出ると聞いていたのが決め手だ。
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