私の幼なじみは超絶カワイイ天使ちゃん・・・だったはずなのに!?
転校生の幼なじみ
◇
翌日、私は案の定と言ったところか、寝坊した。
だって、生まれてこの方恋愛感情を向けられることなんかなかったものだから、純粋に驚いたのだ。
その上、それが幼稚園の頃からの自慢の幼馴染だとすればなおさら。
昨夜は悩みに悩みまくって、夜遅くまで起きていた結果こんな時間に起きてしまうのは仕方ないことだろう。
即座にパテシェールの母が作ってあったケーキを一口頬張って玄関へ向かえば、外にはなぜかイオちゃんがいて、目を疑った。
「い、イオちゃん、こんな時間にどうしたの……?」
「ああ、ハルちゃんのこと待ってただけだよ。昔もこうやって待ってたでしょ?」
「そうだけど……いつから、待ってたの?」
「……ふふ、気にしないで。ハルちゃんと高校に行けることが嬉しくて、テンションが上がってただけだから。」
なんて照れくさそうに言うイオちゃんは、やっぱり昔のようにあどけないかわいさがあって、胸がキューンっと締め付けられる。
しかし、そんなことをしている時間はない。
寝坊した私はイオちゃんの腕を掴んで、ビュンッと地面を蹴って超高速で走った。
それに驚くイオちゃんだけど、こちらとしてはイオちゃんに転校初日から悪印象を残したくなくて、小学校の頃のようにイオちゃんを引っ張ろうと走った結果……
「ぅ、わっ……!」
なぜか突然、イオちゃんにお姫様抱っこされて、イオちゃんは清々しい顔のまま走っていた。
私はイオちゃんがそんな早く走れるようになったこと、なによりも私を抱えることが出来るほど力が持てるようになったことに驚いて、イオちゃんを見上げる。
「俺だって、非力なままの天使ちゃんじゃないんだよ。ハルちゃん一人持ち上げることぐらい造作もないんだから。」
「まっ、待って……重いから降ろしてよ……!!」
「ダーメ。降ろしたらハルちゃん恥ずかしくなって俺のこと置いていくでしょ。」
図星を突き付けられてうぐっと眉を顰めるも、赤信号で止まっている間くらいは降ろさせてほしいと思った。
だってこれ、なんかとても恥ずかしい!!
無駄に良い御尊顔がすぐ近くにあって、お姫様抱っこされている私は本当にされるがままだ。
自分の声の良さを分かっているのか、はたまた無自覚なのかは分からないが、耳元で囁いてくるイオちゃんは超絶カッコよくなっていて、破壊力があって、くらくら眩暈がしそうだった。
「ほら、もうすぐ学校だよ。時間は……少し遅れちゃったね、先生になんて言い訳をする?」
「………イオちゃんのせいだから。」
なんて、責任転嫁も甚だしいことだが、確かに元凶はイオちゃんのせいであって、私はか細い声で弱々しくもそう呟く。
それに対してイオちゃんはキョトンと驚いて、そのあとおかしそうに笑った。
「ふふ、なんだ……ハルちゃんも俺と一緒だったんだね。」
「な、なに、突然笑って。一緒ってどういうこと?」
絶賛機嫌が悪いです、と表情に出しながらもジトリと目でイオちゃんを見る私は、イオちゃんの耳元が赤くなっていることに気付いた。
そうして少し俯いたイオちゃんは、恥ずかしそうに赤くなった耳元を露わにする。
「いや、ハルちゃんも俺と同じで、昨日は俺のことばかり考えてたって思うと感情が昂りそうで……」
そう言いかけたイオちゃんの視線が、恥ずかしそうにキュッと口を締める表情が、とてもじゃないが艶っぽい色気で見惚れてしまう。
そうして昨日はイオちゃんも私のことを考えていたと思うと、私も顔が真っ赤になってしまってボンッと顔が爆発した。
そうして、赤信号だったのが青信号に変わるまで、私はこのなんとも言えない絶妙な空気のままお姫様抱っこされていたのだった。