愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
尋ねると、彼女はふるふると首を横に振った。

「私、留守にしていて……もしかしたら、倉庫にまだ……!」

彼女の言葉に振り仰ぎ、ビルの三階を見つめる。まだ火は奥まで燃え広がっていないようだが、煙が酷くて逃げ場を失っている可能性がある。

「大丈夫だ。必ず助ける」

自分に言い聞かせるようにそう告げる。

肌がひりつくような緊迫感とプレッシャー。そして静かに燃える闘志。

「呼吸器装着! 救助検索準備!」

必ず救い出す、そう覚悟を決めて隊員たちに指示を出す。

「非常階段上の障害物、撤去完了! 進入できます!」

先行していた消火隊が声を張り上げた。通路を塞いでいた荷物の移動も完了したようだ。

「進入開始!」

号令とともに、俺たちは煙の中へと足を踏み入れる。

――真誉、どうか無事でいてくれ……!

十八年前の火災で、母は助けられなかった。

優秀なレスキュー隊といえど、すべての人間を救えるわけではない。この立場になって、悔しいほどよく理解できた。

だが、それでも救える命はある。

ここで彼女を助けられなければ、俺はなんのためにレスキュー隊になったのかわからない。

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