愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
わかってはいる。でも、彼は救助という仕事に文字通り命をかけているんだ。そうならないという保証はない。

「言い方が悪かった。ごめん」

そっと私の肩に触れる。彼の手は水仕事で冷えていて、シャツ越しにひんやりとした感覚が伝わってきた。

「北斗さん」

私はおずおずと彼を見上げる。

「この前、五十嵐さんが言ってたよね。特別な部隊から呼ばれているって」

あれからその話題が出ることはないけれど、気になって少し調べてみた。

消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー。レスキュー隊の中でもとくに救助困難な状況に立ち向かうために作られた精鋭部隊。救助のスペシャリスト集団だ。

現場で闘う消防官の中の、エリート中のエリートと言ってもいい。

大災害が起きれば全国、いや、全世界のどこへでも出場し、命のやり取りの最前線に立つ。

もちろん、自身に降りかかる危険はこれまでの比じゃない。

それでも彼らにしか助けられない命がある限り、死と隣り合わせの戦場へ赴き闘い続ける。

「そこへ行ったら、北斗さんは――」

続きは怖ろしくて声にならなかった。きゅっと布巾を握りしめる。

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