愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
煤汚れて真っ黒になった子どもを抱えている。

『北斗!』

兄は駆け寄ろうとしたが、消防士の大きな体に抱きとめられ、近づけない。

しかし、オレンジ服の消防士がこちらの様子に気づき、兄に向けて親指を立ててくれた。

〝生きている〟〝お友だちは無事だ〟そんなメッセージだったのだろう。

それを見た兄の目から、涙がぽろぽろとこぼれ落ちてきたのを幼心に覚えている。

オレンジ色の隊員たちは、厳密には消防士ではなくレスキュー隊員というのだとあとから知った。

彼らの勇士は兄の目に強く焼きついた。それから兄は『俺は将来、レスキュー隊になる』と夢を語るようになった。

助かった北斗さんも、兄とともにレスキュー隊を目指すようになったそうなのだが――。




「私はまだ六歳だったけれど、はっきり覚えてる。オレンジ色の防火服を着た隊員たちが、北斗さんを抱えて煙の中から出てきたのを」

自分の命を救ってくれたレスキュー隊員に憧れるのは、自然だと思う。そうなりたいと願うのも。

しかし、北斗さんは切ない眼差しで首を横に振った。

「確かに俺は助かった。でも、母は救えなかったんだ」

「あ……」

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