愛しのプラトニック・オレンジ~エリート消防官の彼と溺甘同居中~
北斗さんは彼――八尾さんに敬礼したあと、少しだけ腰を屈めて私に耳打ちした。

「彼は指揮隊の八尾さんだ。この現場の責任者でもある。……俺は駆け出しの頃から世話になっているから、頭が上がらないんだ」

北斗さんを育ててくれた人、ということだろうか。私もぺこりと頭を下げる。

「で、愛しの姫君は無事だったんだな。よかったなあ」

八尾さんの生ぬるい目と、北斗さんのぎょっとした目がこちらに向く。えっと、姫君ってなに……?

「どうして八尾さんがそんなことを」

「五十嵐のヤローがそこで吹聴しているぞ? あの冷静な吉柳が、真っ青になって恋人のもとに飛んでったって」

ふと見ると、五十嵐さんらしきうしろ姿の男性が、ほかの隊員たちと会話をしている。

「あいつ。出場中になにやって……」

北斗さんの目が見たこともないくらい険しくなった。あとで五十嵐さんがドヤされないといいのだけれど……。

「とにかく、ボヤで済んでよかった。それにしてもお嬢さん、ここの三階で働いてるんだって? 二階の連中には気をつけた方がいいぞ。諸々、消防法を無視してる」

< 49 / 155 >

この作品をシェア

pagetop