敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「徳永が俺とつるんでいたのは、俺がシャッツィの跡取りだったからなんだ」

 映画に集中しようと前に意識を向けたタイミングで隼人さんが口を開いた。再び彼を見ると、自嘲的な笑みを浮かべた隼人さんと目が合う。

「高校に入学してあっちから声をかけてくれて、すぐに仲良くなった。向こうも社長の息子で境遇が似ているのもあって、価値観も似ていた。両親や周りからのプレッシャーに対する不満をお互いに言い合ってすごく楽しかったよ」

 懐かしそうに語り出す隼人さんの話に私は黙って耳を傾ける。

「でも、卒業間近に他のやつと徳永が話しているのを聞いたんだ。『親父にシャッツィの息子と仲良くしろって言われているから進藤とつるんでいただけだ』って」

 ところが、続けられた内容に目を見張る。思わず声が漏れそうになったのを、すんでのところで抑えた。

 高校生と言ってもまだ子どもで、それを聞いたときの隼人さんを思うと切なくなる。なにか言いたいのに、なにを言っても上すべりになりそうで言葉が出ない。

 唇を噛みしめていると、頭に温もりを感じた。

「未希がそんな顔をする必要はない」

 苦笑する隼人さんに、私は両頬を押さえ顔を引き締める。どんな表情をしていたのか。

「ショックというより、自分に返ってきた気がした。俺も親に付き合う人間に口を出されてきて、嫌々ながら従っていた部分もあった。だから本当に気が合う友達がなかなかできなかったんだ。徳永を責める気にはなれない。俺がそうやって家の事情や自分にとっての損得で人間関係を築いてきたからこの結果になったんだって思い知ったよ」

 隼人さんは前髪をくしゃりと搔いた。
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