敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「これ、俺も観たことがあったな」

 始まって五分も経たないうちに、隼人さんは呟いた。

 地上波放送も繰り返しあったし、それなりに知名度のある作品だから、彼がどこかで観たことがあるのも納得だ。

「そうなんですか?」

「ああ、高校の頃に映画館で」

「映画館で、ですか? いいですね! 私はリアルタイムでは観られなかったので……」

 隼人さんは誰と観に行ったのかな。やっぱり当時付き合っていた彼女とか?

「徳永に誘われて無理矢理観に行ったんだ」

 余計な考えに支配されそうになった刹那、隼人さんがポツリと呟く。

「仲がいいんですね。徳永さん、隼人さんに会えて嬉しそうでしたし」

 にこやかに返すと、どういうわけか隼人さんの表情が曇った。

「そうでもないさ」

 言い方にも引っかかり、思わず映画そっちのけで隼人さんを凝視する。逆に隼人さんは軽くため息をつき、映画に視線を送っていた。

 どこか寂しそうな隼人さんの横顔を見つめながら、尋ねたい気持ちと深入りしてはいけないと相反する想いに揺れる。

『私は絶対に社――進藤さまのプライベートには口を出しませんし、関わったりしません。依頼された仕事だけをまっとうしますから、心配しないでください』

 やめよう。最初に宣言したじゃない。私に質問する権利はないし、余計なことは聞かないと彼にも告げた。普通の夫婦だったら、なにも気にせず尋ねられてのかもしれないけれど……。
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