敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
『元気になったら、ちゃんと話しますから』

 昨日、体調が回復したら彼に自分の気持ちを伝えようと決意した。けれど、今となってはその判断が正しいのかわからない。

 隼人さんはどう受け取るだろう。困らせる? それだったら一緒にいられないと、この結婚関係自体を考え直すかな。それは嫌だ。

 私の気持ちを押しつけて負担になるくらいなら、またうまくいかないくらいなら適度な距離感で、割り切ったままでいる方がいいのかもしれない。

『沢渡さんが別れたくなったら離婚でいい』

 私が離婚を言わなければ、このままでいられる? いてもいい?

 逆に私が離婚を申し出たら、あっさり終わってしまう関係なんだ。

 体調が悪いからか、さっきから思考が同じところをぐるぐると周り、さらにはどうもマイナス思考だ。

『まったく。いつも余計な負担ばかり増やすんだから』

『なんだよ。だったら社長は違うのか? お前のこと愛しているのかよ?』

 相手も自分を想っていてほしいと願うはそんなにも私には分不相応なのだろうか。

 休んでおけと言われたもののじっとしていたらあれこれ考えてしまいそうで、私はカーディガンを羽織ってリビングに向かった。

 ドアを開けるとコーヒーのいい香りがする。ところが隼人さんの姿はリビングにもダイニングにもなかった。

「隼人さん」

 キッチンに立って朝食の準備をしている隼人さんに声をかけると、彼は目を丸くしてこちらを見た。
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