敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 ゆるやかに目を閉じると唇が重ねられる。

 触れるだけの甘い口づけはすぐに終わり、目を開けて彼を見ると、不意打ちと言わんばかりに再びキスされる。今度はすぐに離してもらえず、根負けして私が唇の力を緩めると、その隙間を軽く舐められる。

「んっ」

 思わず声が漏れ、そのタイミングで隼人さんは唇を離した。至近距離で視線が交わり、彼はさりげなく私の額にキスを落とす。

「移っても知りませんよ?」

 余裕の差は歴然で悔しくなった私は精いっぱいの強がりを口にした。 

「そうなったら未希にじっくり看病してもらうさ」

 なにも言い返せずにいると隼人さんは軽く私を抱きしめ、再びベッドサイドに立つ。

「また呼びに来る」

 そう言って再度私に寝ておくように告げてから隼人さんは部屋を出て行った。

 ひとり残され、明るさもあってか急に部屋が広く感じる。

 その感情を振り払い、ここはおとなしく隼人さんの指示に従って体を倒した。熱はないが天井が揺れている感覚があり、焦点を定めようと何度か瞬きする。

 昨日のやりとりは、やっぱり夢じゃなかったんだ。

 実感すると恥ずかしいような、胸が苦しいような。

 よく考えるとパジャマで髪もボサボサ、すっぴんで顔色もお世辞にもいいとは言えない状態で彼のそばにいたのかと思うと穴があったら入りたい。

 この前も言われたけれど可愛い要素などまったくないのでは?

 鼓動が速くなるのを、深呼吸して落ち着かせる。私、隼人さんに翻弄されてばかりだ。
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