敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「あなたも進藤さんと一緒にいたらわかるでしょ? 本人たちの意思だけではなく、結婚は家や会社との繋がりが大事なの。こういった世界なのよ。未希にはもっと相応しい人がいるわ。だから進藤さんとは」

「嫌!」

 まるで子こどもみたいな言い方だ。母の言い分もわかっている、理解している。私も仕事だと完全に割り切った結婚生活を心がけていた。いつ別れてもいいように。

 けれど、それがすんなりとできないほどに、私の中で隼人さんは大きな存在になっていた。

「私、隼人さんとは別れない。本人に言われるならまだしも、お母さんに言われたからなんて絶対に」

「相変わらず、馬鹿なのね。未希が傷つかないように言ってあげているのに。昨日、進藤さんと直子さんはふたりで夕飯をご一緒して、いろいろ話したそうよ」

 呆れたような母の顔を二度見した。今、なんて? 隼人さんと水戸さんが? 

 嘘だと否定したくなる一方で、昨日、隼人さんが帰ってきて抱きしめられたときに、かすかに甘い香りがしたのを思い出す。女性ものの香水のような……。

『帰ってきたら、未希に大事な話があるんだ』

 あれはなんの話? もしかして……?

 青ざめる私に母が畳みかけてくる。

「未希、目を覚ましなさい。進藤さんみたいな素敵な方が本気であなたを選ぶと思う? 気が利かないし、可愛らしさもない。相手の負担になることばかりして、取り柄もないのに。できるのは家事くらいかしら?」

 そこで母は閃いた!という面持ちになった。
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